盲導犬パピー、ベンジーの毎日(2)

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ベンジーが来て、1か月と少し。
4.2㎏の体重は、今や8.5㎏。倍以上に増えた。
「赤ちゃん」と呼ぶには、あまりにも大きい。
それでも、安心した寝顔はやっぱり赤ちゃんだ。
ただ、最近ではときどき「おじさん」顔になる。
レトリバー種の特徴なのか、
頰や口の周りがたるむあの感じ。

ボーダーコリーのメルは、
ふさふしとした毛並みと顔の作りで、
12歳になっても赤ちゃん顔だった。
犬種によって、
こんなにも違うのかと驚くことの連続だ。

ボーダーだったらここでジャンプをするのに、
身をかがめて大きく尻尾をふるのに。
私の中にあるメルの記憶が、
メルの所作を思い出して懐かしみ、
目の前にいるベンジーと比較してしまう。
もしもこれ、人間だったら、いやだよね。失礼だし。
メルはメル、と私の記憶におさめなくては。

ベンジーの朝は早い。
朝4時には、わんわんと、
2階にいる私たちを大声で呼ぶ。
朝はテンションが1日でいちばん高い。
いわゆるパピー走りでヨーイドン。
甘噛み、がしがし、
お腹を見せては、
また、走り出す。
とまあ、いっときも目を離せない。
スリッパを置いておこうものならば、
まっしぐらに飛びかかり、
勝利品を高らかにくわえ、
嬉々として跳ね回る。
しゃがんだ私の太ももは、
なぜか朝だけ、ベンジーの通り道となる。
太ももをわしわしと踏みつけては、
行ったり来たりを繰り返す。

飛びつかせない、
手や顔をなめさせない、
かじらせない。
盲導犬パピー育てる時のお約束だ。
自分の犬ならば、
赤ちゃんだもの、
となんでもゆるしてしまうことも、
いわばお預かりしている特別な犬、
ここは人間の忍耐が試される。

「夜泣きもあります」と、
パピー担当さんには事前に言われていた。
まさか、野太い声で、わんわん、とは。
鼻を鳴らすきゅーきゅー程度かと思っていたのだ。

ここは狭い下町。
この声を朝4時から聞かされたら、
近所の人たちも大変だ。
階下に降りると、
すでにやる気満々で目が覚めている。
吠えると降りる、を繰り返していくうちに、
吠える時間も早くなっていった。
3時、2時。
これでは朝というよりも、深夜ではないの。

悪循環を断ち切るべく、
朝5時までは、何があっても行かないと決めた。
ご近所さん、ごめんなさい。
3日目、なんとか朝4時30分くらいまでは、
大声でわんわん、をしなくなった。
やがて、わんわん、ではなく、
きゅうきゅう、わわん、わわわわ、と小さくなっていった。

毎朝5時、最初のワン(大)ツー(小)のツーをさせて、
再び眠りに落ちるまではそばにいる。
最初、朝当番は、ほとんど夫だった。
途中、私が大いに反省をして、
順番に起きることになった。
それでもなお、夫の方が多いけれど。

朝5時のツーをしてから6時までの1時間は、
少しずつ、私とベンジーだけの静かな時間になっている。
理想は眠ってくれること。
人がそばにいれば吠えることはない。
カーテンを開け、小さな明かりだけをつけると、
ゲージのすぐ脇にあるソファーに座る。
ベンジーが眠るまで、
私はデボーションといって、
聖書を読み、祈る。
朝食を食べてから、
聖書というこころのごはんを食べる習慣なのだが、
朝当番の日には、こうして糧の順序が逆になる。

それにしても、ベンジーは賢い。
「グッド」と褒めながら、
こちらが落ち着いて丁寧に関わっていくと、
ベンジーも落ち着いて聞き入れてくれる。
3回ぐらい繰り返せば、着実に行える。
日々、その賢さが見える実となって実っていく。
(ただし、落ち着いていればの話)。
この賢さは、ゴールデンレトリバーだからか。
あるいは、ベンジーだからか。
盲導犬の長い長い血筋の記憶が、
ベンジーの中に流れているのは間違いない。

パピーウォーカーとして指導を受けながら育てても、
その子犬が実際に盲導犬になれるかは、
確率で言えば3、4割だと聞いている。
適正がすべて、とも言えるのだとか。
それほど、厳しい働きなのだろう。
朝の祈りに、ベンジーが人を支え、
よき働きをする犬になれるようにということが加わった。
子犬と暮らすということは、
愛すること、
愛されることの連続の中にいることではないかしら。
ふと、祈りながら、
こんな気持ちになって嬉しくなる。
私たち夫婦の関係が「うつる」とも誰かに言われ、
どんなときも平安で、
仲良くいなければね、
などと、こちらにも少しはよい効果が上がっているような。

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盲導犬協会のパピーレクチャーで、お姉ちゃんと2ヶ月ぶりに再会。会ったとたん、弟ベンジーの顔をがぶり。お姉ちゃん、強い。ベンジーはまったく動ぜず。どうやら末っ子はおっとり?
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お姉ちゃん、積極的。ベンジー、たじたじ。
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リードの練習もスタート。じっと見る。なんだろこれ ?
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レクチャーの日はぐったり。
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食卓の下でも安心して眠れるようになりました。涼しいところを見つける天才。今のところ、椅子とテーブルの脚は無事です。
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キッチンの前、私の仕事ゾーン、夫の仕事ゾーンへの入り口には、パピーゲートなるものが置かれています。本棚の前、カップボードの前と、ゲートは増える一方。人間側は、家の中で、ハードルの練習をしているみたいでひと苦労。これも誤飲対策のため、必要なんですね。
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by puppy_Benji | 2016-09-09 10:14 | パピーウォーカー