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2018年3月、よく晴れた日、ベンジーと最後の面会に出かけた。
9か月ぶりの再会だ。

訓練の成果を窓からこっそり見せていただいた後、
ベンジー、と呼ぶと、
大きな尻尾をお尻ごと振って、ビューンとすっ飛んできた。
嬉しい、嬉しい、嬉しい。
実質30分間だけの水入らず、
興奮冷めやらず。
見慣れたあのスマイル。
終始、笑いっぱなしのベンジーだった。
ようやく落ち着いたと思ったら、お別れの時間だった。

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ベンジーは盲導犬にはならない。
9か月間、訓練所で訓練を続けたが、
キャリアチェンジすることに決まった。
じつは今年1月の時点では、
よい結果が出るようにもうひと頑張り、
といったお知らせを訓練士さんからうかがっていたので、
少し意外だった。

でも、もっと意外だったのは、
私たちの気持ちが、
盲導犬には向いてないと判断したと知らされて、
残念というよりもむしろ安堵したことだった。
教会の人や地元の応援団に伝えると、
みなが同じような反応を見せた。
家族って、そういうものかな。

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もちろん、盲導犬の道をそのまま進んでいたら、
それはもう大喜びだったはず。
でもね、ベンジーの甘えん坊気質を考えると、
ちょっと大変かなと、うっすら感じていたのだ。
ベンジーには、
笑いたいときにいつでも笑っていられる、
そんな自由な暮らしが似合っているかな、とも。
盲導犬のユーザーさんたちに、
失礼がないようにと思いながら書いている。

一頭の犬が生まれ、育てられ、
盲導犬になることを目指して、
大勢の人が時間と労力を惜しみなく費やす。
この気の遠くなるような積み重ねの中で、
社会が少しずつでも変化していく。
この一年を通して、
盲導犬のこと、
ユーザーさんのこと、
バリアフリーのこと、
いろんなことを考える機会を与えられたことに、
やっぱり感謝が溢れる。
ムダ、ということはひとつもないのだから。
人間の希望を生まれながらに背負ったパピーたちは、
最終的には、その犬にとって最善の場に送られていく。
ある犬は盲導犬として、
ある犬はキャリアチェンジをして家庭犬として。
なんだか、神さまの視点のようだな、とも思う。

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盲導犬になったならば、
私たちパピーウォーカーは、
ベンジーが引退した時には引き取ることができる。
でも、キャリアチェンジの場合は、
別のボランティアさんが引き取って生涯世話をする。

ベンジーなら、
どこに行っても幸せになれる。
そう信じているし、
ベンジーの性格を考慮して、
最適なご家族に引き取られると聞いていたから、
こちらの方はまったく憂いなし。
ああもちろん、ベンジーが我が家に来てくれれば、
と思うのはパピーウォーカーならば当たり前。
でもね、そういうすべてをわかって始めたことだからそこはあっさりと。

社会の大切な預かりものとして、
ベンジーを育て、
そして必要なところに派遣していく。
こういう循環って、
キリスト者にはおなじみだわと感慨深く。
みんなをこれからもそのスマイルで幸せにね。
ベンジーの新しい道での使命は、きっと笑顔なんだから。


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最後に見せたイケメンくんな表情。
最後に抱きしめて、毎日話しかけていた「ベンジー大好き」を二回繰り返したら、
ベンジーはじっと聞き耳を立てて、うん、わかってるよ、という顔をしました。
その時の表情、一生忘れないと思います。
 ベンジーとの日々、本当に楽しかった !


         
これでベンジーの物語はおしまいです。
このブログは、パピーウォーカーの記録として、ここまでにして、
本家のブログ「牧師館のお茶会」に戻ることにしました。
ここまで読んでくださったみなさん、ありがとうございました !










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# by puppy_Benji | 2018-05-16 10:19 | パピーウォーカー


5月半ば、パピーウォーカーの修了式を目前にして、
宿題に追われた。
ワクチンと検便。
クレートを洗う。
パピー手帳を完成させる。(これは最初の3ヶ月間、毎日記録するもの )
こういった実務的なことから、
ベンジーと一緒の家族写真を一枚用意するだとか、
いちばん困ったのはベンジーへの手紙を書くこと。
訓練犬となるベンジーが、
パピー時代をどのように過ごしたのかを知る助けとして、
必要なのだという。
でも、じつは、
パピーウォーカーのメンタルケアの意味が大きいのではないかしら、
と思ってみたりもする。
記念写真を撮り、手紙を書くことで、
ひとつの区切りをつけることができる。
修了式といった行事も同様だ。
ベンジーにしてみれば、
別れが近いなど何ひとつ知らず、
いつものように毎日を生き切るだけなのだから。

手紙。犬に。
こういうのは苦手なのだ。
なんだか恥ずかしくて。
でも、書いているうちに、
楽しかった10か月間の日々が鮮やかに蘇り、
ほんの数分で書き上げてしまった。

パピーウォカーを振り返ってのこのブログも、
そろそろ新しい季節に入ろうかしら。
その前に、
少しでも盲導犬に関心を持っていただけたら、
そして、パピーウォーカーに挑戦していただけたら、
と願いをこめて、
ベンジーへの手紙をシェアいたします。

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親愛なるベンジーへ


この一年間、ベンジーと過ごせたことを心から感謝しています。

ベンジーがこの家からいなくなる寂しさはありますが、むしろ、これからベンジーが歩んで行く道を思い、誇らしい気持ちでいっぱいです。別れるのではなく、送り出す、ということばがぴったりだと感じています。


ベンジーの名前は、ふだん私たちが読んでいる聖書から思いつきました。ヤコブという人の息子の末っ子、ヘブル語名、ベニヤミンの英語名、ベンジャミンの愛称です。「右手の子」という意味ですが、「信頼の子」「幸いな子」という意味もあります。ベンジーも5頭兄弟姉妹の末っ子、いちばん大きく生まれたパピー。そして、この名前にふさわしく、ここまで育ってくれたことを頼もしく思います。


最初の1週間は、お腹をこわしたり、環境の変化に慣れない様子も見られましたが、気付いてみれば、よく笑うパピーになっていました。ベンジースマイルを見せるようになった時期は、成長の早い時期でもありました。私たちが振り返る度に成長しているのではないかと思うほど、ぐんぐん大きくなって驚きました。


教会に隣接した牧師館で暮らしていますので、人の出入りの多い中で、ベンジーは人が大好きになったのかもしれません。日曜日の礼拝の後、教会の人たちだれもが、ベンジーと会える時間を楽しみにしていました。ほかにも、ウクレレ教室の生徒さん、女性祈り会の仲間たち、子ども会の子どもたち・・・。ベンジーを中心にして、笑いの絶えない時間を、みんなとたくさん過ごしてきました。犬は怖いと思い込んでいる子どもも少なくありませんでしたが、ベンジーの笑顔に引き寄せられて、こわごわながらお尻に触れ、最後には胸のあたりを触れるようになった子が、「ふわふわ」と喜ぶこともよくありましたね。最後まで怖がっていた4歳のさえちゃんは、ベンジーを送り出す前日に、ベンジーの絵を描いてくれましたよ。


ベンジーと散歩をしていると、知らない人からよく声をかけられました。「かわいい!」は毎日のこと。桜のお花見の季節には、隅田川沿いで、「一緒に写真を撮らせてください」ということも多かったですね。「絵を描かせてもらえませんか ?」という方もおられました。ベンジーは、通りすがりの人たちに笑いかけ、振り返ってまでも見つめることがあるので、無表情で歩いておられる方がつい笑ってしまう、という場面にも何度か出くわしました。とくに、道路工事をされている人たちには、人気がありました。盲導犬になると、よそ見はできないと思いますが、人を愛する気持ちは、これからも変わらずに持ち続けてほしいと願っています。


ベンジーと暮らして大変だったことは、犬であれば普通にするであろうことの多くが禁止だったことでした。盲導犬はペットではないのだと、つくづく思い知った経験でした。中でも、散歩中にワンツーをしないというきまりには、とても苦労しました。家でワンツーが2回出るのを待って、それっと散歩に出るのですが、それでも一瞬にしてツーをしてしまう。この時期は、ベンジーの歩行拒否が始まった頃でした。これから歩くことが仕事となるベンジーなのに、いったいどうして。さまざまなきまり、禁止事項に、私たちも息苦しさを覚え、盲導犬という働きの大変さを知るほどに、辛くなる気持ちもわいてきました。


けれども、訓練士さんから、「もっと褒めてあげてください」と励まされ、やはり盲導犬パピーが育つ原動力は「愛」なのだと、気持ちをリセットすることができました。訓練士さんが、個別指導に来てくださったことも、ハードルを超える大きなきっかけとなりました。私たちも褒められ、そして、私たちも褒める。グッド、グッド、と言い続けた日々を今、懐かしくさえ思います。


これからベンジーは、新しい生活が始まりますね。私たちも、新しい季節の始まりを感じています。実際に会えることは、ほとんどないと思いますが、私たちはいつまでもベンジーやお兄ちゃん、お姉ちゃんのために祈っていますね。ベンジーは、私たち人間の希望。社会が本当の意味で開かれていくために、あなたたちが歩き続けてくれるのだと思います。


ベンジーに毎日話しかけていたことばを、最後に記しておきます。

「ベンジーは優しい。ベンジーは賢い。ベンジーは勇敢。ベンジーは特別。

 ベンジーはグッド。ベンジー大好き」。


たくさんの愛を、ありがとう。そして、行ってらっしゃい。


2017年5月20日 


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ベンジーを送り出してから、知人が作ってくださったベンジーキャンドル。感激。犬との別れは二度目ですが、人の優しさに触れることが多いです。

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# by puppy_Benji | 2017-07-09 17:11 | パピーウォーカー

ベンジー、毎日が笑顔


ベンジー、最後の1か月。笑顔の写真を集めてみました。

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カフェでもにっこり。ベンジーのおかげで、まちのあちこちをよく歩きました。

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散歩の最後に立ち寄る小学校前のベンチ。お気に入りの場所でした。

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この笑顔ですからね、座っているといろんな人に声をかけられました。

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1歳に近づいて、人間で言えば20歳。最後の2週間で、あれっと思うほどお兄ちゃんらしくなってきました。でも、こちらの気持ちが緩むと、この通り。

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最後のシャンプー。ドライヤー中も笑っているベンジーは、かなり大物ではないかしら。などと、パピーウォーカーの欲目で思ってしまいます。ふだんは隠れているたまごアタマ。ヨーロッパ系のゴールデンに多いと聞いています。


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# by puppy_Benji | 2017-07-07 22:45 | パピーウォーカー

ゴールデンウイークの最後、
川向こうと呼ばれるこちら側から、
隅田川を越えたところにある汐入公園で、
ベンジーのお別れピクニックを開いた。
ウクレレとお弁当持参、
犬連れも歓迎とお知らせをして、
ゆるやかなつながりの中から、
地元の人たちを中心に声をかけてみる。

ベンジーと遊ぶのは最初で最後だからと、
遠方から来てくださった方と10年ぶりの再会も含め、
集まったのは、小学1年生から大人まで、
全部で15人ほどだったか。
見知らぬ者同士が、
「ベンジー」を真ん中にして、こんにちは。
すぐに打ち解けた雰囲気になったのは、
いつも喜んでいるベンジーのおかげかな。

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芝生広場にいます、とざっくりした案内を出したきりだったので、遠目でも目立つように、この日は赤いTシャツ姿にしました。

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どこからでもスカイツリーが見える隅田川沿いの公園。

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初めましてのお姉ちゃん。5歳くらいだったかな。ベンジー、少し盛り上がってしまい、お姉ちゃんにたしなめられる場面も。

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美人さん。ピンクのボールをずっとくわえてお散歩してました。ライナスの毛布みたいな役割? 照れ屋さんだそうです。

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ベンジー、いろんな人にリードを持たれてお散歩。でも、盲導犬パピーは決めごとが多いので、犬に慣れている人でも、ちょっと難しかったようです。

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ティータイムセットを持参してくださったのは、地元のカフェのオーナーさん。

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最初、はにかんでいたお姉ちゃん犬でしたけれど、いっしょにお散歩した後は、ほら、こんなにリラックス。ベンジーは、いつもと同じように、誰にでも機嫌よくなでられていました。向こうの方では、ウクレレを弾く人たちが。思い思いに過ごしたピクニックでした。
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楽しい時間をありがとう。ベンジーのおかげだね。

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# by puppy_Benji | 2017-07-06 21:34 | パピーウォーカー

新しい本の執筆が始まるので、
ベンジーのこともなかなか書けなくなる予感。
というわけで、
とにかく写真をアップ。
宿題がひっかかっていると、
次に進めないような気がして。

5月に行った奥手賀ツーリズム。
古くからの観光地を再生している途中といった感じ。
サイトを見ると、
なんだかおしゃれではないですか、
と尻込みしそうになるのだけれど、
実際には、「途上感」いっぱい。
つまり、どんどん変わっていきそうで楽しみ。

手賀沼ですからね、
美味しい野菜、いちごなんかを買って帰ってきました。
これはいつものお楽しみ。

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盲導犬候補生からキャリアチェンジした3歳のお姉ちゃん犬と。初対面なのに、ゆるやかな距離感でおたがいに落ち着いていられたのは、パピーウォーカーに育てられたという同じ「匂い」がするからかな。盲導犬に適していない犬は、 大半は家庭犬としてボランティアに引き取られていきます。ただ、育ててくれたパピーウォーカーの元に戻ることはありません。ほぼ100パーセント。もしも、という可能性があると、人間誰しも甘くなったりしますからね。これはきっと長年のノウハウから培われた決め事なのだと思います。
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平日のキャンプ場は貸切状態。何を思うベンジー ? 表情はいつもの通り笑っていましたけど。

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コーヒー屋さんは、残念ながらお休み。

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レンタサイクルもあるのかな ?

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季節の良い休日には、ごった返すのでしょうかね。いつも、人と違うサイクルで動いているのが我が家の流儀。

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ベンジー、ちょっと腰が引けてました。鯉の顔がコワイ。

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観光地にありがちな普通の食堂をリノベしてできたカフェ。まだまだこれから、という雰囲気でしたけれど、カレー、野菜、コーヒーなどが目玉らしく、美味。マトンカレーがおすすめ。犬は店内には入れず、階下のテラスで。テラスといっても、ガーデニングテーブルとベンチがぽんと置かれただけの場所。これから手を入れるそうです。店員さんはみなさん犬好きのようで、犬にも人にもフレンドリーな対応が嬉しかったです。

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いちご狩りには1週間早かったよう。地元の知人に教えてもらったおすすめ農園で購入。千葉のオリジナル品種。なんだったか。とにかく香りがよくて。

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けっこう内弁慶らしいのですが、ベンジーとの相性良し。お互いにしつこくしませんからね。さすが盲導犬協会仕込みです。からだが小さくて、盲導犬向きではなかったようです。いざとなると、身体を張って人間を危険から守らないとなりませんからね。適した大きさ、というのも大切な要素です。

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相変わらず、にこにこしてました。こうして書いていると、ペンジーに会いたくなってきました。もふもふしたい。きっと今日も笑って過ごしたことでしょう。イケアのゴールデンのぬいぐるみを買おうかしら。



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# by puppy_Benji | 2017-07-03 23:05 | パピーウォーカー