盲導犬パピー、ベンジーとの10か月とその後。 文筆家+牧師の奥さん、宮葉子のブログ


by 牧師館のお茶会
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

パピーウォーカー修了式の宿題


5月半ば、パピーウォーカーの修了式を目前にして、
宿題に追われた。
ワクチンと検便。
クレートを洗う。
パピー手帳を完成させる。(これは最初の3ヶ月間、毎日記録するもの )
こういった実務的なことから、
ベンジーと一緒の家族写真を一枚用意するだとか、
いちばん困ったのはベンジーへの手紙を書くこと。
訓練犬となるベンジーが、
パピー時代をどのように過ごしたのかを知る助けとして、
必要なのだという。
でも、じつは、
パピーウォーカーのメンタルケアの意味が大きいのではないかしら、
と思ってみたりもする。
記念写真を撮り、手紙を書くことで、
ひとつの区切りをつけることができる。
修了式といった行事も同様だ。
ベンジーにしてみれば、
別れが近いなど何ひとつ知らず、
いつものように毎日を生き切るだけなのだから。

手紙。犬に。
こういうのは苦手なのだ。
なんだか恥ずかしくて。
でも、書いているうちに、
楽しかった10か月間の日々が鮮やかに蘇り、
ほんの数分で書き上げてしまった。

パピーウォカーを振り返ってのこのブログも、
そろそろ新しい季節に入ろうかしら。
その前に、
少しでも盲導犬に関心を持っていただけたら、
そして、パピーウォーカーに挑戦していただけたら、
と願いをこめて、
ベンジーへの手紙をシェアいたします。

d0366488_23324573.jpg


親愛なるベンジーへ


この一年間、ベンジーと過ごせたことを心から感謝しています。

ベンジーがこの家からいなくなる寂しさはありますが、むしろ、これからベンジーが歩んで行く道を思い、誇らしい気持ちでいっぱいです。別れるのではなく、送り出す、ということばがぴったりだと感じています。


ベンジーの名前は、ふだん私たちが読んでいる聖書から思いつきました。ヤコブという人の息子の末っ子、ヘブル語名、ベニヤミンの英語名、ベンジャミンの愛称です。「右手の子」という意味ですが、「信頼の子」「幸いな子」という意味もあります。ベンジーも5頭兄弟姉妹の末っ子、いちばん大きく生まれたパピー。そして、この名前にふさわしく、ここまで育ってくれたことを頼もしく思います。


最初の1週間は、お腹をこわしたり、環境の変化に慣れない様子も見られましたが、気付いてみれば、よく笑うパピーになっていました。ベンジースマイルを見せるようになった時期は、成長の早い時期でもありました。私たちが振り返る度に成長しているのではないかと思うほど、ぐんぐん大きくなって驚きました。


教会に隣接した牧師館で暮らしていますので、人の出入りの多い中で、ベンジーは人が大好きになったのかもしれません。日曜日の礼拝の後、教会の人たちだれもが、ベンジーと会える時間を楽しみにしていました。ほかにも、ウクレレ教室の生徒さん、女性祈り会の仲間たち、子ども会の子どもたち・・・。ベンジーを中心にして、笑いの絶えない時間を、みんなとたくさん過ごしてきました。犬は怖いと思い込んでいる子どもも少なくありませんでしたが、ベンジーの笑顔に引き寄せられて、こわごわながらお尻に触れ、最後には胸のあたりを触れるようになった子が、「ふわふわ」と喜ぶこともよくありましたね。最後まで怖がっていた4歳のさえちゃんは、ベンジーを送り出す前日に、ベンジーの絵を描いてくれましたよ。


ベンジーと散歩をしていると、知らない人からよく声をかけられました。「かわいい!」は毎日のこと。桜のお花見の季節には、隅田川沿いで、「一緒に写真を撮らせてください」ということも多かったですね。「絵を描かせてもらえませんか ?」という方もおられました。ベンジーは、通りすがりの人たちに笑いかけ、振り返ってまでも見つめることがあるので、無表情で歩いておられる方がつい笑ってしまう、という場面にも何度か出くわしました。とくに、道路工事をされている人たちには、人気がありました。盲導犬になると、よそ見はできないと思いますが、人を愛する気持ちは、これからも変わらずに持ち続けてほしいと願っています。


ベンジーと暮らして大変だったことは、犬であれば普通にするであろうことの多くが禁止だったことでした。盲導犬はペットではないのだと、つくづく思い知った経験でした。中でも、散歩中にワンツーをしないというきまりには、とても苦労しました。家でワンツーが2回出るのを待って、それっと散歩に出るのですが、それでも一瞬にしてツーをしてしまう。この時期は、ベンジーの歩行拒否が始まった頃でした。これから歩くことが仕事となるベンジーなのに、いったいどうして。さまざまなきまり、禁止事項に、私たちも息苦しさを覚え、盲導犬という働きの大変さを知るほどに、辛くなる気持ちもわいてきました。


けれども、訓練士さんから、「もっと褒めてあげてください」と励まされ、やはり盲導犬パピーが育つ原動力は「愛」なのだと、気持ちをリセットすることができました。訓練士さんが、個別指導に来てくださったことも、ハードルを超える大きなきっかけとなりました。私たちも褒められ、そして、私たちも褒める。グッド、グッド、と言い続けた日々を今、懐かしくさえ思います。


これからベンジーは、新しい生活が始まりますね。私たちも、新しい季節の始まりを感じています。実際に会えることは、ほとんどないと思いますが、私たちはいつまでもベンジーやお兄ちゃん、お姉ちゃんのために祈っていますね。ベンジーは、私たち人間の希望。社会が本当の意味で開かれていくために、あなたたちが歩き続けてくれるのだと思います。


ベンジーに毎日話しかけていたことばを、最後に記しておきます。

「ベンジーは優しい。ベンジーは賢い。ベンジーは勇敢。ベンジーは特別。

 ベンジーはグッド。ベンジー大好き」。


たくさんの愛を、ありがとう。そして、行ってらっしゃい。


2017年5月20日 


d0366488_23374209.jpg



d0366488_23382091.jpg



d0366488_23384085.jpg



d0366488_23384869.jpg



d0366488_23423788.jpg

ベンジーを送り出してから、知人が作ってくださったベンジーキャンドル。感激。犬との別れは二度目ですが、人の優しさに触れることが多いです。

[PR]
Commented by アイガモ at 2017-07-18 11:52 x
「こころのごはん」を購入し このブログに辿り着きました。共通点が多くびっくり‼️私も岐阜で牧師の夫と働いております。17年前にパピーウォーカーをやり、教会でオリーブ号を育てました。7年後にオリーブ号は早期退職しリタイヤ犬として我が家へ帰ってきました❤️
14歳で召されました。
犬好き牧師館の微笑ましい様子にほっこりです。
Commented by puppy_Benji at 2017-07-18 21:35
> アイガモさん
まあ、なんと共通点が多いのでしょう。もしやアン好きさんでしょうか。早期退職というのもあるのですね。私たちも、引退犬ボランティアの登録をしています。オリーブ号、よい名前。ラブでしたか ? ブログお持ちでしたら、ぜひ教えてくださいね。
by puppy_Benji | 2017-07-09 17:11 | パピーウォーカー | Comments(2)